かつての常識だった「RICE処置」に代わり、現在のスポーツ医学界で新たなスタンダードとなっているのが、2019年に提唱された**「PEACE & LOVE(ピース&ラブ)」**という指針です。
この指針の最大の特徴は、「I(Ice:冷却)」が含まれていない、という点にあります。
回復を妨げないための「PEACE」
怪我の直後(急性期)に必要なのは、冷却ではなく以下の5つです。
- P(Protect): 保護。さらなる損傷を防ぐ。
- E(Elevate): 挙上。腫れを抑える。
- A(Avoid Anti-inflammatories): 抗炎症薬やアイシングを避ける。
- C(Compress): 圧迫。腫れを最小限にする。
- E(Educate): 教育。自分の体の治癒能力を信じる。
特に「A」では、氷や抗炎症薬が組織修復を遅らせる可能性が明記されています。安易に冷やして炎症を止めるのではなく、体が持つ本来の回復プロセスを尊重することが最優先されているのです。
長期的な回復を見据えた「LOVE」
さらに、急性期を過ぎた後は「LOVE」に移行します。
- L(Load): 適度な負荷。組織の再構築を促す。
- O(Optimism): 楽観。前向きな思考が回復を助ける。
- V(Vascularisation): 血流促進。有酸素運動で酸素を届ける。
- E(Exercise): 運動。機能回復を目指す。
「痛み」への新しい向き合い方
アイシングに頼らず痛みをコントロールするには、第1部〜第3部でお伝えした「温度管理」と、このPEACE & LOVEの考え方を組み合わせることが重要です。痛みは体が発するシグナルであり、無理に消し去るものではなく、適切にマネジメントしながら回復の指標にするべきものなのです。
炎症とアイシング①-炎症は治癒に必要なプロセス-
炎症とアイシング②-アイシングの歴史-
炎症とアイシング③-クーリングを推奨-

